「リフォーム」と「リノベーション」、この2つの言葉、あなたは使い分けていますか?
どちらも住まいをより快適にするための手段ですが、この2つはその目的や工事内容、費用感など、様々な点で異なります。
「リフォームとリノベーションの違いって何だろう?」
「どちらが自分の家に適しているのかな?」
「費用や工事内容の違いがわからない…」
何から考えれば良いのか分からない、という方に向けて、リフォームとリノベーションの定義、工事内容、費用、メリット・デメリットなどを詳しく解説していきます。
あなたの家に最適な選択をするために、この記事をぜひご参考にしてください。
こんにちは、この記事の監修は一級建築士の林です。今回は、リフォームとリノベーションの違いをわかりやすく解説していきます。
あなたの建物に最適な選択肢を見つけるためのお手伝いができれば幸いです。
リフォームとリノベーションの違い
はじめにリフォームとリノベーションの違いについて解説していきます!どちらも「住宅の改装・改修」を意味しますが、法的な定義や明確な線引きはなく、企業によって同じ工事でも「リフォーム」と呼んだり「リノベーション」と呼んだりすることがあります。
しかし、それぞれ異なるメリット・デメリットがあり、工事の規模や住まいの性能に関する違いがあるのです。では、両者の違いについて詳しく見ていきましょう!
リフォームとは?
リフォームとは、建物や設備の老朽化や損傷を修復し、元の状態に戻すことを指します。具体的には、壁紙の張り替え、床の補修、設備の交換など。主に、以下の様な工事が挙げられます。
- 内装工事: 壁や天井の張り替え、床の貼り替え、クロス貼り替えなど
- 設備工事: キッチンや浴室、トイレの交換、給排水管の交換など
- 外装工事: 外壁の塗装、屋根の葺き替えなど
リフォームは、現状の問題を解決し、機能性や美観を回復させることを目的としている人に適しています。
リノベーションとは?
リノベーションとは、既存の住宅の構造や間取りを大きく変え、住まいの価値を向上させる改修工事のことです。リフォームよりも大規模な工事が多く、以下の様なことが挙げられます。
- 間取り変更: 壁を撤去したり、新たに壁を作ったりして、間取りを大きく変える
- 設備のグレードアップ: 高機能なキッチンや浴室、トイレを設置する
- 断熱性能の向上: 断熱材を入れ替えるなどして、住宅の性能を向上させる
リノベーションは、単に住宅を修繕するだけでなく、自分好みの住まいを実現したいという人に適しています。
リフォームとリノベーションの違いを比較
リフォームとリノベーションの違いをまとめると、以下のようになります。
項目
|
リフォーム | リノベーション |
---|---|---|
目的
|
住宅の機能回復 | 住まいの価値向上 |
工事規模
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部分的 | 中規模~大規模 |
工期
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短い | 長い |
費用
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比較的安価 | 高額 |
変更できる範囲
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部分的な変更 | 全体的かつ大幅な変更 |
リフォームのメリット、デメリット
リフォームは、住まいの快適性や機能性を高める上で有効な手段ですが、メリットだけでなくデメリットも存在します。リフォームを検討する際は、メリットとデメリットを比較し、ご自身の状況に合った判断をすることが大切です。
リフォームのメリット
- 住みながらの工事: 部分的な工事のため、住みながらの工事が可能
- 費用を抑えられる: 新築と比較して、費用を抑えられるケースが多い
- 短期間で完了: 全てを新しくする新築と比べ、リフォームは短期間で完了することが可能
リフォームのデメリット
- デザインの自由度が低い:内装の修繕や設備交換が中心で、住空間としての機能性や使い勝手は、現状のまま
- 老朽化している部分への対応: 壁や床下の劣化、配管の老朽化など、目に見えない部分の状況を把握することが難しい
リノベーションのメリット、デメリット
リノベーションは、住まいを自分好みにカスタマイズできる魅力的な選択肢ですが、同時に注意すべき点もいくつかあります。メリットとデメリットをしっかり理解し、慎重に計画を進めることが大切です。
リノベーションのメリット
- 自由な設計: 間取りやデザインを自由に設計可能
- 豊富な物件選択肢: 中古物件は新築に比べて選択肢が豊富。理想の立地や広さの物件が見つかる可能性大
- 資産価値向上: リノベーションによって、住宅の価値が向上する場合あり
- 新築よりお得: 新築に比べてコストを抑え、理想の住まいを手に入れることができる
リノベーションのデメリット
- 時間と手間: 物件探しから設計、工事まで、新築に比べて時間がかかり、工事中の生活が不便になる可能性あり
- 築年数の問題: 築年数が古い物件は、耐震性や設備劣化の懸念あり
- 費用: リフォームローンは住宅ローンよりも金利が高い傾向があり
リフォームとリノベーションの一般的な費用相場
つぎは、国土交通省の資料を参考に、主な施工内容別の費用目安を見ていきましょう。。リフォームやリノベーションの費用は、施工内容、使用する材料、業者の種類などによって大きく異なります。あくまで目安ですので、複数の業者に見積もりを依頼し、比較検討することが重要です。
参考文献:国土交通省 リフォームの内容と価格について
リノベーションの費用相場にについては、こちらの記事で解説しています。
→徹底解説!リノベーションの費用相場は?使えるローンと業者選びも一級建築士が紹介
水回り
施工範囲
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施工内容 | 目安費用(万円 |
---|---|---|
バス・洗面所
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バスタブの交換 | 14~20 |
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洗面台の交換 | 20~50 |
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システムバスの交換(戸建) | 60~150 |
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システムバスの交換(マンション) | 50~100 |
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洗面所の改装 | 20~100 |
トイレ
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温水洗浄便座の設置 | 8~16 |
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トイレ全体の改装 | 20~100 |
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タンクレストイレへの交換 | 30~50 |
キッチン
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IHコンロへの交換IHコンロへの交換 | 18~80 |
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システムキッチン(I型)の交換 | 40~80 |
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システムキッチン(壁付→対面型)の交換 | 75~200 |
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キッチン全体のリフォーム | 80~400 |
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アイランドキッチンへの改修 | 300~450 |
ポイント
- 設備のグレード: 高機能な設備を選ぶと高額になる
- 間取り変更: 配管の位置を変更したり、壁を撤去したりする場合は、追加費用がかかることがある
内装
施工範囲
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施工内容 | 目安費用(万円 |
---|---|---|
床
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畳の交換 | 6~12 |
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畳からフローリングに交換 | 15~60 |
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段差の解消 | 8~20 |
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床暖房の設置 | 50~150 |
壁
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クロスの交換 | 6~30 |
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珪藻土のクロスに交換 | 18~30 |
間取り
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2室を1室にまとめる | 50~80 |
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和室から洋室への改修 | 50~200 |
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リビングの改修 | 200~400 |
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廊下の改修 | 20~100 |
ポイント
- 施工範囲: 全室リフォームか一部のリフォームかによって費用は大きく変化
- 材料: 高品質な素材を選ぶと費用は高くなる
外装・増築
外装リフォームは、建物の寿命を延ばし、美観を向上させることができます。
施工範囲
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施工内容 | 目安費用(万円 |
---|---|---|
屋根
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スレート屋根の塗り替え | 20~80 |
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金属屋根の重ね葺き | 90~250 |
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瓦屋根の交換 | 70~120 |
外壁
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外壁材の重ね塗り | 50~150 |
基礎
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耐震補強(金物の使用) | 20~60 |
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耐震補強(基礎からの工事) | 100~200 |
増築
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増築 | 300~2,000 |
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減築 | 800~2,600 |
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二世帯住宅化 | 800~2,500 |
その他
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雨どいの交換 | 5~40 |
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シロアリ防止処理 | 15~30 |
ポイント
- 建物の構造: 木造、鉄骨、RC造など、建物の構造によって費用は変わる
- 規模: 増築や減築は、大規模な工事となるため、費用も高額になる
外構・その他
施工内容 | 目安費用(万円 |
---|---|
ウッドデッキの新設 | 10~80 |
太陽光発電システムの導入 | 200~300 |
オール電化への移行 | 100~200 |
高効率給湯システムの設置 | 55~100 |
ポイント
リフォーム・リノベーションの流れと注意点
ここでは、リフォームとリノベーションの一般的な流れと注意点をまとめました。
工事の流れや注意点を把握しておくことは、トラブルを防ぎ、理想の住まいを実現するために非常に重要です。
工事の流れ
1.業者選定
- 口コミや評判を確認し、信頼できる業者を選ぶ
- 複数の業者から見積もりを取り、比較検討する
2.現地調査とヒアリング
- 業者に現地調査を依頼し、リフォームやリノベーションの可能性や具体的なプランを確認する
- 希望する工事内容や予算、工期などを業者と詳細に打ち合わせする
3.見積もりとプランの確認
- 業者から提出された見積もりやプランを確認し、納得できる内容かどうかを検討
- 必要に応じて、プランの修正や追加工事の相談を行う
4.契約書の作成と締結
- 工事内容、費用、工期、支払い方法などを明記した契約書を作成してもらう
- 契約書の内容を十分に確認し、納得した上で署名・捺印する
5.工事開始
- 工事が開始される前に、近隣住民への挨拶や工事中の注意事項を確認する
- 工事の進捗状況を定期的に確認し、問題があれば早めに対処する
6.工事完了と引き渡し
- 工事が完了したら、業者と一緒に最終確認を行い、問題がないかをチェック
- 引き渡し後に不具合が見つかった場合は、速やかに業者に連絡し、対応を依頼する
注意点
1.契約書の内容を十分に確認
- 契約書には工事内容、費用、工期、支払い方法などが明記されていることを確認
- 曖昧な表現や不明確な点がないかをチェックし、必要に応じて修正を依頼する
2.追加工事の確認
3.近隣住民への配慮
- 工事中は騒音や振動が発生するため、近隣住民への配慮を忘れずに行う
- 事前に挨拶をし、工事のスケジュールや内容を説明しておくと良いでしょう
4.定期的な進捗確認
- 工事の進捗状況を定期的に確認し、問題があれば早めに対処する
- 業者とのコミュニケーションを密にし、工事がスムーズに進むように心掛ける
5.アフターフォローの確認
- 工事完了後のアフターフォローについても確認しておく
- 保証期間や対応内容を事前に確認し、引き渡し後のトラブルに備える
トラブル発生時の対処法
リフォームやリノベーション工事を依頼する際に、トラブルが発生することは少なくありません。以下の対処法を参考にしてください。
トラブルが発生したら
- 工事業者との話し合い: まずは工事業者と直接話し合い、問題点を明確にし、解決策を模索するしましょう。メールや書面でのやり取りを記録しておくと良いです。
- ADR(裁判外紛争解決手続): 話し合いで解決しない場合は、ADRを利用することを検討しましょう。ADRは、第三者の仲介によって紛争を解決する手続きで、裁判よりも迅速かつ柔軟に対応できます。
- 弁護士への相談: それでも解決しない場合は、弁護士に相談することをお勧めします。弁護士は法的なアドバイスを提供し、必要に応じて裁判手続きを進めることができます。
トラブルを未然に防ぐためのポイント
- 信頼できる業者の選定: 口コミや評判を確認し、信頼できる業者を選びましょう。
- 詳細な見積もりの取得: 見積もりを詳細に確認し、不明点があれば事前に質問しておくことが重要です。
- 工事中の定期的な確認: 工事の進捗状況を定期的に確認し、問題があれば早めに対処するようにしましょう。
各工程にかかる期間の目安
工事の規模や内容によって大きく異なるため、あくまで目安ですが、一般的なケースでは以下のようになります。
- 設計段階: 1~2ヶ月
- 見積もり段階: 1~2週間
- 工事期間:
- 内装リフォーム: 1~2週間
- キッチン・浴室交換: 1~2週間
- 間取り変更: 1ヶ月~数ヶ月
- 全面リノベーション 数ヶ月~1年以上
リフォーム vs リノベーション どちらを選ぶべきか?
ここまで、リフォームとリノベーションの違いやそれぞれのメリット・デメリットについて見てきましたが、最終的にどちらを選ぶべきかは、目的や予算、建物の状態によって異なります。選択に迷われている場合は、以下のポイントを参考にしてみてくださいね
リノベーションとリフォームを選ぶ基準
- 予算: リフォームの方が費用を抑えられる
- 工期: リフォームの方が短期間で完了する
- 希望するデザイン: リノベーションの方が自由なデザインが可能
リフォームが向いている物件とは
建物自体に大きな問題がない場合に適しています
- 老朽化した部分の修繕が必要な物件
- 部分的な改修で済む物件
- 予算が限られている場合
リノベーションが向いている物件とは
古い建物や、構造的に問題がある場合に適しています
- 間取りを変更したい場合
- デザイン性の高い空間にしたい場合
- 住宅の性能を向上させたい場合
補助金制度
最後に、 リフォームやリノベーションに関する補助金制度を紹介していきます。住宅の改修を検討している方にとって、非常に魅力的な制度ですが、内容は複雑で、頻繁に変更される場合もあるため、事前にしっかりと情報収集することが必要です。
補助金制度は国土交通省、経済産業省、環境省などが実施する国の補助制度と地方公共団体の補助制度があります。予算執行状況は各事業の事務局のサイトでご確認ください。
長期優良住宅化リフォーム推進事業【国土交通省】
画像出典:国交省報道発表資料
- 対象: 既存住宅の長寿命化や省エネ化を目的としたリフォーム
- 補助内容: 性能向上リフォームや子育て世帯向け改修に対して補助金が支給されます
詳細はこちら「国立研究開発法人 建築研究所 長期優良住宅化リフォーム推進事業」ホームページ
次世代省エネ建材の実証支援事業【経済産業省】
- 対象: 省エネ効果が見込まれる高性能断熱材や調湿建材などを用いたリフォーム
- 補助内容: 工期短縮可能な高性能断熱材や調湿建材の導入に対して補助金が支給されます
詳細はこちら「一般社団法人 環境共創イニシアチブ (SII) 次世代省エネ建材の実証支援事業」ホームページ
※令和6年度の公募は終了しました
介護保険法に基づく住宅改修費の支給【厚生労働省】
画像出典:厚生労働省ホームページ
- 対象: 要支援・要介護認定を受けた方の住宅改修
- 補助内容: 段差解消や手すりの設置などに対して補助金が支給されます
詳細はこちら「厚生労働省」ホームページ
住宅省エネ2024キャンペーン
1.先進的窓リノベ2024事業【環境省】
画像出典:先進的窓リノベ2024事業ホームページ
- 対象: 断熱性能の向上を目的とした窓のリノベーション
- 補助内容:断熱改修やエコ住宅設備の設置に対して補助金が支給されます
詳細はこちら「先進的窓リノベ2024事業」ホームページ
2.子育てエコホーム支援事業【国土交通省】
画像出典:子育てエコホーム支援事業ホームページ
- 対象: 子育て世帯や若年夫婦世帯の省エネ改修
- 補助内容: 断熱改修やエコ住宅設備の設置に対して補助金が支給されます
詳細はこちら「子育てエコホーム支援事業」ホームページ
3.給湯省エネ2024事業【経済産業省】
画像出典:給湯省エネ2024事業ホームページ
- 対象: 住宅に高効率給湯器を設置する事業
- 補助内容: 導入する高効率給湯器に応じて補助金が支給されます
詳細はこちら「給湯省エネ2024事業」ホームページ
4.賃貸集合給湯省エネ2024事業
- 対象: 賃貸集合住宅の所有者が従来型の給湯器を補助対象である小型の省エネ型給湯器に交換する工事
- 補助内容: 導入する小型の省エネ型給湯器に応じた定額が支給されます
詳細はこちら「賃貸集合給湯省エネ2024事業」ホームページ
子育て支援型共同住宅推進事業【国土交通省】
画像出典:子育て支援型共同住宅推進事業ホームページ
- 対象: 賃貸住宅および分譲マンションの小学生以下の子どもを養育している世帯が対象
- 補助内容: 子どもの安全確保や防犯対策を目的とした設備の設置に対して補助金が支給されます
詳細はこちら「子育て支援型共同住宅推進事業」ホームページ
地方公共団体の補助制度
詳細はこちら「地方公共団体における住宅リフォーム支援検索サイト」
おわりに
リフォームとリノベーションの違いを理解することで、あなたの家に最適な選択が見えてきたのではないでしょうか。それぞれのメリットとデメリットを踏まえ、目的や予算、将来のライフスタイルを考慮して決断することが重要です。どちらを選ぶにしても、信頼できる専門家と相談しながら進めることで、満足のいく結果を得ることができるでしょう。あなたの家がより快適で魅力的な空間になることを願っています。